最近、春馬と蛯原さんがよく話してる気がする。
昨日も手洗いに行って戻ってきたら仲よさそうに話してたし。
他の人だったらそうは思わないのかもしれないけど、春馬は普段女子とはあまり喋らないから気になってしまう。
「ねぇ、河本くん。英語の予習やった?」
春馬の隣に座る蛯原さんの高い声が耳まで届いた。
また話してる。
「やったよ。」
「あのさ、Bの4って分かる?」
「…問題見せて。」
気になって後ろを向いたら一つの教科書を二人が見ていて、すぐに前を向いた。
ちょっと距離近くない?
「あー、やったけど分かんなかった。」
「そっかぁ。誰か分かんないかなぁ。」
席が近いのは嬉しかったけど、会話とかも結構聞こえちゃうなぁ。
まぁ、聞き耳立ててるからってのもあるんだけどね。
「乃々香。」
「なっ…なに。」
突然肩に手を置かれ、春馬に名前を呼ばれた。
まさか話し掛けられるとは思わなくて変な声が出てしまった。
勢いよく振り返った顔も変になってたかもしれない。
春馬は口元を隠しながら肩を震わせた。
「…何笑ってんの。」
恥ずかし、顔が熱くなってきた。
「ごめ、お前…びっくりしすぎ。」
私めっちゃ笑われてるじゃん。
そんなやばかったのか。
でも、こんなに笑ってる春馬久々に見たかも。
「もう忘れて!で、何?」
本当は何のことか分かるけど、盗み聞きしてたなんていえない。
「ん?あぁ、蛯原さんがここ分かんないって、乃々香ここ分かる?」
「んー?」
席から立ち上がって、春馬の机にある教科書を覗く。
コツンと頭が当たるまで近づいたのは見えなかったから。
…なんてきっと蛯原さんへの対抗心だ。
「わかるよ、ちょっと待ってね。」
椅子に座りなおして机の中からノートを取り出し、答えを書いたページを開き見せた。
「これ。合ってると思うけど、間違えてたらごめん。」
「いいよ、ありがと。」
春馬は自分の答えを消して、私のノートの答えを写す。
その仕草を見ていた。
「乃々香ちゃん、私も見せてもらっていい?」
話すのは初めてだからか、蛯原さんは控えめに言い、首を傾げるとミディアムボムの髪がふわっと揺れた。
「あ、うん。全然いいよ。間違えてたらごめんね。」
「ありがと。」
蛯原さんは自分より遥かに女の子らしくて、可愛くて、きっと男子はこんな子を守りたいって思うんだろうなぁ…。
春馬もそうなのかなって考えたら、胸が酷く痛んだ。