「ん?」
名前を呼んだものの次の言葉が出てこなかった。
俯いたまま顔も上げられず、微かに震える手。
そこに春馬の手が触れた。
途端に熱が生まれ、頬が緩んで、言葉が出てきた。
「また同じクラスだね。」
頬が緩んだまま、顔を上げた。
だめだ、照れる。
今絶対顔赤い。
「だな。席も近いし、よかった。」
春馬も頬を緩ませる。
久々に見た笑顔は何だか擽ったかった。
今日は先生の話を聞いたり教科書を配られたりして終わった。
いつもの授業に比べたら楽だけど、久々の学校は疲れるなぁ。
「乃々香。」
疲れて机に伏せていると帰る準備を終えた大輝が私の席まで来た。
「このあと予定ある?」
「いや、別に約束はしてないけど。」
愛梨を誘ってカフェでも行こうかなぁとは考えてたけど。
「じゃあ、どっか行こ。」
「うん。」
後ろの時計を見る振りをして春馬を見たら机に伏せていた。
話、聞こえてないかな。
「春馬も誘う?」
時計を見た直後、大輝が耳元で囁く。
耳に息が当たって顔が赤くなるのがわかった。
「冗談だよ。」
私の反応を見てクスクスと笑う大輝。
「ばか。」
肩の辺りに軽くパンチを入れる。
こういうの慣れてないからすぐに照れてしまう。