動くものが無くなった森の静寂は耳を刺すようだった。
ここに着くまでに多少汗をかいたのだが、それも今は引きやや肌寒いくらいだった。

時間は歩みを止めたかのように速度を落とした。

先ほどの高揚はやがて緊張に姿を変えた。

俺は暗闇の中に打ち付けられている人形を思い浮かべ、昼間の違和感は何だったのかと考えていた。
 
木……人形……幹。
 
あっ、俺は思わず声を上げた。

従姉妹が振り返る気配。

しっ、と小さな声が聞こえた。

俺は違和感の正体に気づいた。 

何で思い当たらなかったんだろう。

あの人形を俺と従姉妹は見上げていた、勿論従姉妹は女、俺はまだ中学生だ、だがあれは二メートルよりかなり高い場所に打ち付けられていた。