そこに俺は手早く自分の番号とアドレスと名前を打ち込んでいった。


「おまえ、名前は?」


言いながら地味子の携帯から空メールと着信を俺の携帯に残していく。


「……水原 日菜琉(ひなる)」


「俺は有宮 善雅な。クラスは?」


「……2の5」


「タメかよ。俺2組な」


ここにきてやっと彼女の名前と学年を知る。


何も知らない癖に付き合ってって言われた地味子の方は、かなり怪訝そうに俺を見ていた。


まぁ、何と思われようと俺としては構わないけどな。
既成事実さえ作って、絋也を納得させられれば。


「じゃあ、詳しくはメールするから」



そう言って地味子改め、日菜琉にシンプルなピンク色の携帯を返した。


「あのっ!」


「……遅れるんじゃない?」


「えっ? あっ!」



何か言いたそうに俺を呼び止めた日菜琉だったけど、俺の言葉で携帯の時計を確認し、慌てたように目線を泳がせている。


俺の言葉でようやく当初の目的を思い出したらしい。


散々慌てながら再び裏門に手を掛けてる。


さっきも思ったけど、背がちっこいせいで全然登れる気がしない。


「ほらっ」


「わぁっ!!」


だからそんな日菜琉の腰に手を回して、そのまま抱え上げて裏門に乗せてやる。


いきなり触れたせいか、驚きと相俟って日菜琉の顔は真っ赤になっていた。


なんつーか、うぶな反応……予想通りだけど。


「姉ちゃんによろしく」


門のてっぺんでぽかんとしてる日菜琉にこう言い残して、俺は予定より遅れて教室に戻っていった。