そこには少し短めの髪で部活の仲間に混じって、はにかんだように笑う中学生の善雅くんが居た。



……善雅くん、こんな顔して笑うんだ。


初めて見る善雅くんの笑顔。
そこにはわたしがずっと見たかった笑顔があった。


「アイツと別れてからの善雅は、芳川を見返しくて不特定多数の女の人と関係持って……経験値積むことに必死だった」



わたしの知らない善雅くんが次々と城崎くんの口から飛び出してくる。



それを聞きながら思うのは……やっぱり善雅くんはわたしには遠い存在なんだってこと。




「じゃあ……ヨリを戻したら、善雅くんはもうそんなことしなくて良くなるね」


静葉さんを見返したいって強い気持ちに捕らわれて、色々な人と関係を持っていた善雅くんはどんな気持ちだっただろう……。

……きっと気持ちがこもってないのにそんなことしたって、善雅くんの心は満たされなかったんじゃないかな。


「静葉さんとの関係で善雅くんの心が傷ついたんなら……治せるのは静葉さんしかいないもんね」


「俺は、水原さんなら出来るって思ったけど」


「えっ?」


「最近の善雅、なんか柔らかい顔してたから。水原さんの影響だなって思ってた」


それが城崎くんの言うようにわたしの影響なら嬉しいけど……。


「わたしじゃダメだよ……。善雅くんの隣に立てない」


「なんで?」


「……わたしじゃ釣り合わないもん」



城崎くんの言う柔らかい善雅くんの表情だってきっと、彼が元々持っていた魅力の一つだったんだ。
わたしの存在なんて関係ない。


わたしの答えを聞いた城崎くんは、難しい表情を浮かべて黙り込んでしまった。



「あの……教えてくれてありがとう」


城崎くんにお礼を告げると、彼は困ったような笑顔を浮かべて首を振ってみせた。