「授業中なのにどこ行くの~? つーか、サボっちゃダメでしょ」
おまえが言うなよ! ってツッコミでも入りそうな俺のセリフに、地味子は動揺しまくりの表情で俺を見つめ続けている。
「お願い! 今日だけなんですっ!」
確かに。
この地味子がこんなことをしょっちゅうやってるなんて思えない。
こんな真面目だけが取り柄そうな地味子がサボるなんて、よっぽどのことがあるんだろう。
「何の用?」
「お姉ちゃんの文化祭でファッションショーが……」
「ファッションショー?」
「服飾の専門学校生なんです。お姉ちゃんがデザインした服が出るから」
興味本意で地味子のサボリの理由を聞いてみる。
しどろもどろしながらも必死に説明するのをきいて、状況はだいたい飲み込めた。
別に元々止める気もないし、むしろそんなに大事な用事なら行けばいいとすら思う。
だけど、
「見逃してやるよ」
「ホントっ? ありがとうございます!」
「ただし……」
もちろんタダでは見逃さない。
だって、この恰好のチャンスを見逃すなんて出来るワケないし。
思わずニヤリと口の端が上がった俺に、次の言葉を待つ地味子の顔に緊張が走った。
「俺と付き合ってよ。一ヶ月」
「えっ? えーーっ!?」
俺の出した交換条件に地味子は目も口も全開にまん丸くしながら驚いてる。
そりゃあそうだろ。
面識も無いイケメンな俺に付き合ってなんて言われたんだ。
女子ならビビらないワケがない。
答えに困ってる地味子は、パクパクと口を金魚みたく動かしながら固まってる。
この調子だったらいつまでも答えそうにない……。
下手したらコイツが行きたがってた姉貴の文化祭が終わりかねない。
しゃーない。
こうなったら強攻だ。
「携帯出して」
「えっ、あっ……はい」
差し出した俺の手のひらに、地味子は素直に上着のポケットから携帯を取り出して乗せる。