五限目。

トイレに行ってきます宣言をして、堂々と校舎裏でサボる俺は珍しく頭を悩ませていた。



「ていうか……名前も学年も知らねぇし」


携帯の画面に写し出された受信メール。


『昨日は楽しかったわ。また遊びましょうね♪』



昨日のオネエサマからのお礼メールをぼんやり見つめながら、俺の頭にはさっきの地味子の顔が浮かんでた。


絋也の手前、大見得切ってああやって言ったものの……。
ぶっちゃけ……どこの誰とも知らないヤツをどうやって彼女にしたらいいものか。


ここはやっぱり、正攻法で一目惚れってとこか?


あんな地味子に一目惚れなんて、俺のプライドが許さないけど。
これが一番手っ取り早い。


だって、こう言われて嬉しくない女なんか居ないだろ。
それが、所謂イケメンって部類の人間に言われれば尚更嬉しいに決まってる。



なんとか地味子を落とす考えもまとまったところで教室に戻るべく立ち上ったその時。


偶然、俺の視界には思いがけないものが飛び込んできた。


「あれ……」


校舎裏にある今は使用されていない小さな門。


この通称裏門に上着を羽織り、カバンを担いだ女の子がよじ登ろうとしているではないか。


明らかにこれは授業中の一般生徒がとる行動ではない……よな。


その様子をしばらく見ていた俺に、ついついいたずら心が芽生え……彼女に向かって携帯を構える。



「見ぃちゃった」


「えっ!? わぁっ!」


携帯のカメラのシャッター音と俺の声に驚いた彼女は、慌てながら登りかけの裏門から落ちるように飛び降りた。


よろめきながら着地するなり、不安そうに俺を見上げるこの顔。


間違いない。
こいつは廊下の地味子だ!!