俺は楓の背中に向かって 「ありがとう。」と声を掛けた。 『何かあったら、いつでも俺が話聞いてやっからよ!』 あいつは振り返らずにそう言い捨てて 医局を後にした。 (本当、あいつには一生頭が上がらないな。) そうして椅子にドカッと座り直すと、 一気に疲れが押し寄せて来る。 俺は再び "例の" カルテに目をやった。 (明日、彼女の里親に電話してみるか。) そう考え、仕事に戻るのであった。