沖田は立ち上がる。

「貴方は元幕府方でしょう?勅使河原さんは将軍家の娘です。誰に頼まれたのかは知りませんが…貴方は元の主君の娘を刃にかけるのですか?」

「時勢が変われば敵も変わる。主人が変われば獲物も変わる。暗殺者とはそういうものだろう」

腰に帯びた刀を抜く伊蔵。

「東郷は、政府の動向を探る為にヒノモト全国に間者を立てている。古奈美姫がヒノモトに入った事は、とうの昔に知れていた」

「東郷が依頼主ですか…!」

「応」

沖田の言葉に、伊蔵は返事した。

「戊辰大戦終戦後、飼い主を失った俺はヒノモトを人知れず流れ、東郷に拾われ、奴の護衛となった。そして此度の乱で蜂起するにあたり、政府軍の要職を次々と手にかけている。次は古奈美姫だ」