「醜かろう」

巨漢は言う。

「恐怖は敵を委縮させる。その為だけに、自ら松明で顔を、体を焼いて醜き姿になった。この恐ろしげな顔姿だけで、敵は立ち竦む」

「そんな人斬り…いえ、暗殺者が幕府方の暗部にいたというのを、戊辰大戦中に聞きました」

沖田は言う。

「岡田 伊蔵(おかだ いぞう)。恐らくは将軍家にも知られていない、影中の影、闇中の闇。維新政府側の要人を最も多く暗殺したという、戊辰大戦一の暗殺者」

「政府随一の人斬り鬼にそこまで言って頂けるとは光栄だ」

唇まで焼けてなくなり、歯茎剥き出しの口元が、愉悦に歪んだ。