普段のように俺は放課後、サッカーゴールを

動かしていた。

それは一年の仕事である。

その最中、俺が密かに想いを寄せているマネと

2年のイケメンな先輩が笑顔で話している姿

が目に入ってきた。

俺は黒い感情が自分のなかで蠢くのを感じながら、

完全に自分の世界に入っていた。

そして、他の部員の不注意でゴールが倒れてきたのだが、

俺は周りの声も聞こえず、

気付いたときには左腕に激痛が走っていた。

すぐに俺は医務室に運ばれて、手当てを受けたが、

腕は幸い、ヒビが入るだけですんだ。

だが、当分の間、走ることは禁じられた。

それは夏休みになるたった2日前の出来事であった。

俺は病院でも治療を受けたあと、

歩いて帰宅した。

相変わらず広い家から明かりは見られなかった。

一人で食べるご飯が冷たいが、

いつも温めようとする気は起こらなかった。

大きな画面のテレビをつけても

なんだか虚しくて、行儀なんかを

無視してスマホを弄っていた。

やはり、右腕しか使えないことはいささか不便であった。