「?…あの…」
「俺達、付き合いだしたんだ、いつまで敬語を使う気だ?さん付けも、いらない…心って呼んでくれ」
「あっ!でも…すぐに…あのー…」
「一度、呼んだら直ぐ慣れる…今呼んでみろ」


私は、心臓がドキドキした…。
「…」
《心…心…》
俺は、俯くセラの顔を覗いた。
「セラ?ゴメン…無理があったな…」
心さんは、そう言って私を抱き締めた。
「し…ん」
俺の腕の中で微かに、俺の名前が聞こえた…。
「…もう一度聞かせてくれ」
私は顔を上げ、心…さんの顔を…目を見た。
「心…好き…です」
「クスッ…俺も、セラが好きだ」
私は恥ずかしくなった!胸の音!鼓動が心さんに聞こえるんじゃーないかって胸の中で思っていた。
「じゃー…中、入りな」
「はい…じゃーなく、うんでした」
「じゃーな…」
俺は、セラの手を離し坂道を下り歩きだした。
私は、心…の手が離れ、心の背中を見送った…。
《心…心…》
私は、心の背中に、小さく手を振った。
《セラ…俺は、生まれて始めて女性を好きになった…ありがとう、セラ…》
俺は、歩きながら後ろを振り向いた。
街灯の下で、セラが手を振っていた。
「セラ…」