――私は、おばちゃんの言葉に甘え仕事を休んでしまった…。
軽く食事を終え、居間のソファーで横になって、クッションを抱き抱えた。
「…どちらかが、好きじゃー駄目かぁ…」
直君は、私を好きになってくれた…私は…直君を…。心さんは私の事を…嫌い…私は、心さんの事が好き…。
「私が、恋に傷つかずに済む方法は…私が努力して…直君を好きになる事…」
私は、嫌な事を考えてしまった…自分が傷つかずに済む為に、努力して好きになろうなんて…相手に…直君に対して悪い事を、直君を傷つけてしまう……私は、最低だ…。


――俺は、ホールの隅に立ち騒音の中で、昨日の夜の事を思い出していた…。
セラが、抱き締められていた、あの時の俺の感情…。
俺は、あの光景を目にする迄は、セラの事を好きだと感じていた…もしかしたらセラが、母親に対する…女性は皆同じと、嫌な考えを…思い出を…俺のトラウマを消してくれるんじゃないかって感じていた…。
《セラ?…お前は…》
(トントン!)
俺は体がビクッとなった。
考え事をしていた俺は、赤ランプが点灯している事に気付かず、お客は不機嫌そうに俺の肩を叩いた。
「ちゃんと仕事しろよ!!」