「雨…止んだな…」
俺は立ち上がり、座っているセラに向って手を出した。
私は義足を付け、心さんの手を握り立ち上がった。
「帰ろう…」
「…はい…」
《この手を離したくない…ずっと、心さんと居たい…》
《この手を…セラの手を…》
心さんは、小屋を出ると私の手を離した。
俺は空を見上げた…空には夕焼けに染められた赤い雲が流れていた。
俺はセラの顔を見ずに言った。
「一人で帰れるか?」
《心さん…》
「はい…大丈夫です…じゃー…さようなら…」
「あぁ、気を付けて…」
心さんは、空を見ながら言った…私の顔…見てくれない…。
私は、グチャグチャになった砂浜を歩きだした。
《終わっちゃった…嫌われちゃったよ…》
涙で砂浜が、ぼやけて揺れている…。
《見せなきゃよかった…見せなかったら…あなたは、私を好きになってくれましたか?…》
セラの後ろ姿を、俺はずっと見ていた…セラが居なくなった砂浜には、セラの足跡が、どこまでも続いていた…。
《自分で自分の気持ちが分からない…愛なのか?…同情なのか?》
今まで付き合って来た女には、自分の事を喋った事は無かった…女を抱きしめても安らぎは無かった…その俺が…。