「ねぇ…、セイラを抱いてもいいかな…」
「沙羅さん…はい、抱いてください」
沙羅さんは、ぎこちなく手を伸ばし、セイラを抱き上げ、しっかり胸元にセイラを寄せ抱いた。
「…可愛い…」
沙羅さんは、そう言ってセイラの手のひらに、小指をおいた。
セイラは、優しく沙羅さんの指を握った。
その夜、誠と沙羅は夕食を俺達と一緒に食べた。
「…疲れただろう?…」
「ううん」
セラは、セイラのお尻をポンポンっとリズムをつけながら叩いていた。
「…やっぱり、私一人で行ってくるから」
「すいません…」
俺は、お母さんに頭を下げた。
「平気よ!…私は、平気だから」
義足を着けた、セラがセイラを抱きながら立っていた。
「でも!…」
「平気だって!お母さんを病院まで送ってあげて…外は、雨がひどいから…」
セラは、窓に打ちつける雨を見ながら言った。
「平気よ、タクシーで行くから…」
お母さんは、腰に手をあて立ち上がった。
「心!」
セラは、俺に向かって何かを投げた。
≪!?≫
「…セラ」
俺が、握ったのは車の鍵だった。