「…いいんだ…お前は、何も悪くない…」

「…………」

心は、優しく私を抱きしめた。





――「…そうか、セラが…」

「あぁ…あんなセラを見たのは初めてだ…」

俺は、直を呼び出し朝の出来事を話した。

「…多分、薬が効かなくなってきてると思う…」

「…違う薬は…」

俺は、直の顔を見た。

直は、ゆっくりと横に首を振った。

「…今の薬は、一番強い薬を出しているんだ…これ以上は…」

「助けてやってくれ!!助けてやってくれよ!直!!」

俺は、直の腕を掴んで言った。

「…俺だって、俺だってセラを助けてやりたい!!医者として一人の患者を!!…」

直の涙は、白衣に落ち涙が染み込んだ。

「…ごめん…」






――セイラと夕焼けを見ながら、私の残された時間を考えていた。

「…セイラ、貴女は、どんな人を愛するのかな…どんな女性に、なるのか見てみたいな…」

セイラの、手のひらに小指を乗せると、セイラは力強く私の小指をギュッと握りしめてくれた。

「……ありがとう、セイラ」

海の風と潮の匂いは、梅雨を呼び、その先の夏を呼んでいた。

≪……出逢った…一年前の夏を…≫