「直…」

「…セラ?、そこに居るんだよな?…俺の声聞こえてるよな?」

≪!……直君≫
「…セラ!心の話を聞いて欲しい!…心の話を聞いて、これから先の事を二人で考えて欲しい!セイラの為にも!……俺が言えるのは、ここまでだ…」
≪直君……≫
「…直…」
「…セイラと、おばちゃんは、俺が送ってく…」
直は、俺の肩に手を置き軽く肩を揺らした。


「………セイラ…ママ怖いよ…」
「………セラ………海に行かないか…俺達が初めて出会った海に……」
「………初めて出会った海に…………」
私は、ゆっくりと立ち上がった。
「…………」
トイレの中からは、返事がなく俺は、トイレに背を向けた。
「…………」
≪!!≫
「…心…防波堤に行きたい……」
セラは、俺の背中を抱きしめ言った。
「…あぁ…行こう…」
冷たいセラの手を握り俺は言った。




俺とセラの耳に、静かな波音が聞こえてきた。

「…波音が優しい……」

セラは、俺の背中で言った。
「あぁ…」

心の背中に耳をあてると、心臓の音が波の音と重なり音を奏でていた。

「寒くないか?」

「…温かいよ…心の体温が私の体を温めてくれているから…」