(ガダッ!!)
手術室前の廊下を走っていると手術室の大きな扉が開いた。
「セラ!」
手術室からベッドの上に寝かされたセラの姿があった。
「セラ!?セラ!?」
俺は、セラの頬に触れ名前を呼んだ。
「まだ薬が切れてない…」

振り向くと、松村先生がマスクを取って手術室から出てきた。
「先生!」
「………」
松村先生の肩には力が抜けていた。
「…先生…手術は…」
俺は、松村先生の顔を見た。
「…出来るだけの事は……だが、セラちゃんの体は……」
「………」
松村先生は沈痛な表情で口を閉じ、それ以上の言葉は無かった。

俺は、廊下の壁にもたれ崩れた。
「………セラ」




俺は、病室の扉を開けられずにいた。
≪………≫
「…心…」
目を開けると白衣姿の直が居た。
「………」
俺は、頭を抱え目を閉じた。
「…心」
直は、俺の肩に手をおいた。
「………セラ……」





――『……ラ……』
≪……?≫
気が付くと私は、一人濃い霧の中に立っていた。
「……心?……」
辺りは真っ白で何も見えない。
そら耳だったのか、心が私を呼ぶ声が聞こえた。
「…前もここに…」
私は一歩一歩ゆっくりと歩きだした。