「…サンキュー…」
直は、黙って俺にコーヒーを渡し病室の椅子に座った。
「…良かったな、赤ちゃん…おめでとう」
直は、コーヒーを一口飲んで言った。
「あぁ、ありがとう…」

「…セラは本当に心の事を愛しているんだな…」
直は少し寂しげに言った。

「…俺と出会わなければ今頃セラは、こんな苦しい思いをしなくてすんだのかもしれない…」
俺はコーヒーをテーブルに置いて言った。
「…じゃー何であの時セラを追いかけてきた…あの時お前が邪魔しなければ今頃俺達は結婚していたかもしれない」
直は、俺の目を見て言った。
「…直…お前まだセラの…」
(ガダッ!!)
≪!!≫
直は突然、俺の胸ぐらを掴んだ。
「…弱音を言うな!…セラは今お前と子どもの為に頑張っているんだ!…セラを幸せにしてやってくれ…頼む…」
直の頬に涙が流れた。
「…ごめん……セラの傍で…セラと子どもを幸せにしていく…」
俺は、直の目を真っ直ぐ見て言った。
(ガダッ!!)
勢いよく扉が開いた。
「手術が終わりました!」

長い廊下の窓ガラスから、眩しすぎるくらいの朝陽が射していた。
俺は、ネックレスを握りしめ手術室に向かって走った。