俺は、その手に人差し指で触った。
≪!≫
俺の人差し指を小さな命が強く握った。
「…セラの指も握ってやってくれ…」
眼を閉じて眠っているセラの胸元に赤ん坊を寝かせた。
「…セラ…俺達の赤ん坊だ…元気な女の子だ…」
「………」
セラは天使の様な顔で眠っていた。
俺は、セラの指を赤ん坊の手のひらにつけた。
赤ん坊は、静かに力強くセラの指を握った。
「…お前のママの手だ……セラ…ありがとう…」
俺の目から流れ落ちる涙は、赤ん坊が握るセラの指に落ちた。




夜中3時22分…セラは、自分の命よりも大切な赤ちゃんを産んだ……そのまま直ぐに、セラの手術が始まった。
赤ん坊は、当分の間保育器から出れないと言われた。

窓ガラスを一枚間に挟んで、俺は保育器の中で一生懸命生きようとする命に涙が流れた。
「…がんばれ……ママも今…一生懸命がんばってる……がんばれ……」



病室の窓からオレンジ色の朝日の光が、ベッドを射していた。

俺は、両手を重ねて朝日に祈った。
≪…セラを連れていかないでくれ…≫
ベッドのシーツに俺の涙が染み込んだ。
「…心」
≪!≫
振り向くと白衣姿の直が立っていた。