「…セラ…」
セラは自分でマスクを外し、ゆっくりと眼を開き閉じる瞼を何回も瞬きをして俺を見た。
「セラ…」
「……泣き…虫…」
セラは、優しい微笑みで俺に言った。
「…泣いてねぇーよ」
セラの息は荒く話すのが苦しそうだった。
「……心…私……は…」
「マスクしろ!」
俺は、セラの口元にマスクを着けようとした。
「平気…よ…」
セラは、マスクを拒んだ。
「セラ…」
「…聞いて…欲しい…の…」
「…なんだ?…」
俺は目に浮かぶ涙をこらえた。
「…私達の……赤ちゃん…を…恨まな…いで…お願い……私は……愛する人……の…赤ちゃんを……産めて……本望よ……例え……自分の……命が…消える事…になっても…私が選んだ……命は……私達の……赤ちゃんの…命……だから…この子を…恨んだり……しないで……」
セラは、綺麗な大粒の涙を流しながら、俺に言った。
「…分かった!……分かったから…もういい…」
俺は、静かにセラの口にマスクを着けた。
「…ありが…とう…ごめんね……心…」
セラは、震える手で俺の頭を撫でた。
「………」
頷く俺の頭を撫でるセラの手が、力無くベッドに落ちた。
「…セラ?…」