「あのね、直君、おじさんでは…」
「んー、ここで見ても分からないから行こう!」
「えっ!」
直君は私の手を引っ張り、工事現場へと歩きだした。
「ちょ、ちょっと!待ってよ!」
「何だよ?見てるより聞いた方が早いって!」
「そうじゃなくて…」
「すみません!」
直君は作業中の、おじさんに話をかけた。
「何?!」
「あのー、つい最近ここで働いている人が、絡まれていた、この人を助けてくれてお礼が言いたくて来たんですが」
おじさんは、私の顔を見ながら言った。
「んー、俺は、ちょっと分からないなぁ、他の奴に聞いてみるよ」
《そんな!そこまでしてくれなくても…恥ずかしいよ》
「あー!すいません!いいです!仕事中に悪いので!」
「平気だよ、待ってな!」
私は、おじさんを引き止めたが、おじさんは、細長い機械のスイッチを切り周りの人達に声をかけていた。
「直君!ここまでしなくても!」
「いいじゃん!お礼を言うのは、大事だぞ!」
「そうじゃなくて…」
「何だよ?さっきから?」
「だからね!…」
「おぉーい!君!」
大声を出して手招きしながら、おじさんが私達を呼んだ。
「おっ!見つかったかも!行くぞ!」