その後も、俺の話は続き…松村先生からもセラに話をした。

「…セラ?」
「考える時間は?」
セラは、いつもと変わらない話し方だった。
「…早ければ…」
松村先生と直君の顔は、険しかった。
「…1日!…1日だけ私に時間を下さい…」
セラは、頭を下げ言った。



セラの足は、海に向かって歩き出した。
俺は、セラの肩を引き寄せながら、ただ…黙って居るだけだった。
≪…セラ…≫
心が…私の肩を抱いていなければ、歩けない程ショックだった…。
≪…心…≫


海に着くと、いつの間にか太陽は厚い雲に隠れていた。

私は、砂浜に座った。
「………」
先に座ったセラは、黙ったまま静かな海を見つめていた。
「…着ろ…」
心は、着ていたコートを脱ぎ私の背中に掛けた。
「…ありがとう」
セラは、俺の肩に頭をのせた。
「…セラ」
「しっ!…波…波の音を聞いて…」
「波…」
俺は、波を見つめた。
「…目を閉じて…心の中を一回空っぽにしよう…」
「………」
≪…空っぽに…≫
俺は、セラに言われた通りに目を閉じ、波の音に集中した。
車の音…電車の音…鳥の鳴き声……消えた。
俺の耳には、目の前の波の音しか聞こえない…。