一つの大切な命が、この世から消えてしまってから2ヶ月が過ぎた。

お母さんは、お父さんが亡くなってから、しばらくの間、体調を崩していたが、私のお腹の赤ちゃんを守ると、お父さんのお墓の前で誓い、それからは前の姿の、お母さんに戻った。
「セラ!行くわよ!」
「はーい!今下りる!」
玄関先で、私の名前を呼ぶ、お母さんの声が聞こえた。
私は、部屋の中心に立ち片付けられた部屋を見渡した。
「…長い間ありがとう…」
私は、大きく深呼吸をして、部屋を出た。
「お待たせ!」
「トラック出ちゃうわよ!」
お母さんと私は、トラックに乗り、新しい家に向かった。
お父さんが、愛した海をいつでも眺める事が出来るようにと、海を眺めれる家に引っ越す事にした。
今まで住んでいた家より小さな家だが、家のすぐそばに、お父さんのお墓も有る…お母さんは、お父さんが寂しがらないと嬉しそうな顔をした。
海を横に走るトラックから、私は、秋の海を眺めた。
≪…心…元気にしてますか?…逢いたいです…≫


――セラが、俺の前から姿を消し、それから少しして俺は街を離れた。
「………」
芝生の上で大の字になり、凪がれ行く雲を見ていた。