私は少し頬笑んだ。
「助けてくれた人?」
「うん!」
「誰?」
「お店に来てた、お客さん!偶然ね…」
自分でも顔がにやけてしまうのが分かった。
「ふーん…男か…」
何だか直君の目が冷たい。
「男の人だけど…何よ?」
「だから、顔がニヤケてんだな」
「別に!…もう帰るから!おやすみ!」
「おい!」
「暇な人と付き合ってる時間は無いの!私は朝早いので!」
「なんだよ!…おやすみ!」
「はーーい、おやすみ!」
ちょっと、いじけた直君に手を振り私は家に入った。
私は部屋に入りベッドに寝転んだ…月の明かりで薄明るい部屋。
私は左手を掴まれた手首を握った。
「はぁー…」
心さん…胸がドキドキしてるよ…手首を掴んだ冷たい手…心さん…。
……胸が何だかドキドキして苦しい。
私は窓の枠の中にある三日月を見ていた。