おじちゃんが、言った言葉が、なぜか違う意味を言っているように、聞こえた。
「……おじちゃん?」
「…あっ!ごめんな…、セラ!今日は三人でご飯を食べないか?!」
突然おじちゃんは、私を見て言った。
「…うん、でも…」
「今日は、本当に体調がいいんだ!!お母さんの作った煮物が食べたい!お母さんに電話しておいてくれ」
おじちゃんは、小さい子どものように駄々を言っているように見えた。
「うん…分かった!電話してくるよ」
私は、剥きかけのリンゴを置いて病室を出た。
≪おばちゃんの、煮物かぁ…≫
私は、階段を下りて電話ボックスに向かった。

≪!!≫
直君の姿を見つけた。
私は、階段の陰に隠れた。
≪直君、私を探しに!…≫
私は、息を潜めて小さく丸まった。
(コツ、コツ…)
階段を上る靴の音が、遠退いていく。
「…はぁー」
私は、心臓をおさえ大きく息をはいた。
「…おばちゃんに電話しないと…」
私は、回りを気にしながら、電話ボックスに向かった。


――セラが、姿を消してから一日が長い…仕事が休みの日は特に長い、海を眺め…防波堤に寄る……もしかしたら逢えるかもしれないと期待をしている自分がいた。