仕事を終え、その足で俺はセラの家に向かった。
(ピンポーン…)
チャイムを鳴らしたが、誰も出て来なかった。
「………」
俺は、玄関前に座り込み、セラの帰宅を待った。


――「…先生、おじちゃんの体…」
「…んー…体力もだいぶ落ちてる…私には、何も言わないが、本人は自分の時間が、後どのくらいか気付いていると思う…」
松村先生は、レントゲンなどを見て言った。
「…そう…」
「ところで、セラちゃんの体調は、どうだ?…どこか変わったことは無いか?」
「…うん、悪阻は治まったみたい…先生?」
「ん?」
「…私に何かあったら…赤ちゃんを一番に考えて助けてね…」
私は、お腹に手をあて、松村先生に言った。
「何言ってるんだ!変なことを言うんじゃない!」
松村先生は、眉間にシワを寄せていった。
「ごめんなさい…でも、約束して!一番に赤ちゃんを助けるって!」
「…助けるに決まってるだろ!赤ちゃんも!セラちゃんも!二人を必ず助けるよ!」
松村先生は、私の頭に手を置いて、撫でた。
「ありがとう…」


――「心君?」
俺は、膝から頭を離し、顔を上げた。
「こんばんは!」
門の前に、おばさんが立っていた。