《…………》
俺は、目を開けた。
「……今……」
バイクの音に、紛れて微かにセラを呼ぶ、声が聞こえた気がした。
「………」
辺りを見渡したが、砂浜は薄暗く、ハッキリと見えなかった。
「………帰るか…」
俺は、起き上がり服に付いた砂を叩きながら、階段に向かった。


――「とまれ!」
《!!》
階段を上る私の手を、直君は掴んだ。
「痛い!」
「痛いか!?俺の心(こころ)は、もっと痛んでいるんだ!!分かるか!?」
「…ごめんなさい…」
「…謝ればいいと思ってるのか!?」
「…そんな事…」
「じゃー何で平気でそんなこと言うだ!」
「…平気じゃない……だけど、このまま直君の傍に居ても、直君は幸せになれない!!お互い苦しむだけ…」
「…………」
私の、手首を掴む直君の手を離した。
「……セラ!!」


――《!!》
砂浜は歩く俺の耳に、ハッキリとセラを呼ぶ声が聞こえた。
「………セラ?」
俺は、辺りを見た…。
《セラ!…》
階段の方に目を向けると、セラと直の姿を見つけた。
「セラ」
俺は、足早にセラの元へ向かった。

――「逃げるな!話は終わってない!!」
「やめて!直君!」
「おい!!」