《…思い出…大切な場所……》
「…嫌な思い出が有るから…」
私は、嘘をついた……あの場所は、心の笑顔を見た最後の場所……あそこには、心と楽しく過ごした時間や匂いが残ってる……心と私の最後の場所……。
「嫌な思い出?…」
「そう…昔、付き合ってた人に振られた場所なの」
私は、悪魔に魂を渡した。
「………」
「初恋は、実らないって本当の事だった…直君の初恋は実った?」
私の口からは、嘘が並べられていた。
「…忘れたな…今日は帰ろう…」
《………私は最低だ》
「…ごめんなさい…」
「謝るな…」
直君は、私の頭を撫でた。


――俺は、満月が綺麗に見えるよう海に来ていた。

「…セラ…お前は今苦しんでるだろ…その苦しみ……悲しみを全て俺に預けてくれ……」
ネックレスを握り口付け、俺は呟いた。
砂浜に寝っ転がり夜空を眺めた。


――「海…寄っていかない?…」
「海?…分かった」
《話さなきゃ!…直君に話さなきゃ…》
直君は、駐車場に車を停め車を下りた私達は、歩道を歩き海へ向かった。
先を歩く直君の背中を、私はみつめていた。
「どうした?」
「ん?…何でもない…」
私達は、肩を並べ階段を下りた。