――俺は、走って駅に向かった。
駅に着き、辺りを見渡したが、セラの姿は無かった。
「はぁー!はぁー!…セラ…」
《お前は、傷つかなくていい…俺が全てを償う…俺が、お前の手を離したから……セラを傷つけてしまったんだ……》
俺は、その場から動けずにいた。


――窓の外を眺めると、見覚えがある景色だった。
《…ここ…》
「…直君、ここって…」
直君は、ハンドルを握りながら、言った。
「この辺の場所、セラ知ってるのか?」
「…見覚えが、あるような…」
「遊園地と水族館が、ある所に向かっているんだけど…もしかして、昔来た事あるか?」
《!!……心との思い出の場所……》
「………」
「…来たこと有るんだな…」
直君の顔から、笑顔が消えた。
「…ごめん…」
「…いいんだ!謝るなよ!」
直君は、笑顔で言ったが、無理に笑顔を作っているように見えた。
「…ごめん…悪いけど行きたくない…」
「えっ?!」
車は、信号で停まった。
「…行けない…」
「………」
直君は、黙ったまま車を歩道の近くに停めた。
「……何か、思い出でもあるのか?」
直君は、ハンドルを両手で握りしめ額を付け目を閉じながら言った。