私は、直君が帰って来る前に家に着いていた。
直君は、機嫌が悪いのか私が話し掛けても、余り反応が無かった。
食事を終えテレビが無い部屋が、静まり返っていた。
畳に寝っ転がって私に背を向けている、直君に話し掛けた。
「…直君?何か仕事で嫌な事でも有ったの?」
「……」
「……はぁー……」
私は、無言の直君の姿を見て、小さなため息が出た。
「……ため息か?」
「えっ!?」
背を向けたまま、直君が一言言った。
「…つまらないか?…俺と居ても?…」
「そんな事…」
「嘘付くな!!」
直君は、ガバッと起き上がり、私の両肩を強く握った。
私をみつめる直君の目が恐かった。
「…直君……痛…いよ…」
「俺と別れてから、どこに行った?!…誰と会ってた!?…言えよ!!」
《!!……、嘘を突き通さなきゃ……》
「…どこに…も…」
「嘘付くな!!…あれから直ぐ、病院を出たんだろ!?出てから、どこで誰と会った!?…心か!?また俺に隠れて、あいつと会ってたのか!!」
「…心と…逢って…無い……、私は検査をしてた…途中…松村先生に急患が来て……残りの検査は……また明日に……」
肩を握る直君の手の力が弱くなった。