直君は、黙ったまま玄関を開け家の中に入った。
家の中は、ジメっとした嫌な空気でカビの臭いがした。
「…今明かりを点ける…座ってろ…」
そう言って直君は、私を下ろした。
私は、暗闇の中で手探りで地面を触った。
《畳?!…》
ザラっとした砂のような物が、畳の上に散らばっていた。
「…セラ」
《!!》
暗闇の中で私の後ろから、声が聞えた。
「…直君?」
(シュボッ!!)
突然、音と共にライターの光が点きロウソクに明かりが点いた。
「…はぁー…」
私は、ロウソクの明かりをみて安心した。
「…ここは昔、俺が子供の頃に住んでた家だ…」
「……」
そう言って直君は、ロウソクを床に置き座った。
「…直…」
「暮らそう!」
「えっ!?」
「古いけど、ここだったら誰にも邪魔されない!!ずっとここに居てくれ!毎日俺の帰りを待って居てくれ!俺だけを見て!俺の傍に居てくれ!!」
「…ちょ、ちょっと待って!どうしたのよ急に!?」
「…セラの心の中には、あいつが居るんだろ?…だから、俺に隠れて嘘をついてまで、あいつと会っているんだろ!?…どうなんだ?…正直に言えよ!!」
直君は、私の両肩を強く握りながら、揺すった。