「お父さんと直には、友達の所に泊まったと言いなさい……」
「おばちゃん!?」
おばちゃんは、私に背を向けた。
「もし…直と結婚をしたくないのなら、正直に話せば良いわ……これ以上、直に辛い思いはさせない方がいいけれど……だけど…直の気持ちも、ちゃんと考えてあげてちょうだい……それと自分の気持ちもね……」
おばちゃんは、店へと歩きだした。
「……」
《直君の気持ち……私の気持ち……》
私は、おばちゃんの小さな背中を見つめていた。


――仕事が終わり、俺は急いで家に向かった。
もしかしたら、まだセラが部屋に居るんじゃないかと期待している自分がいた。
「はぁー!はぁー!…」
俺は、ポストを見ずに、玄関の前で呼吸を整えドアノブを触り回した。
(ガチャッ、ガチャッガチャッ!!…)
「…居るわけ無いよな…」
部屋に入って電気を点けて驚いた。
「あっ……」
朝まで散らかっていた部屋が、綺麗に整理整頓されていた。
洗濯物も畳んでくれたのか、綺麗に置いてあった。
「…セラ…」
俺は、ベッドに寝転がった。
布団がフカフカだった。
「こんな物まで…」
布団は、太陽の匂いと微かにセラの匂いがした。
「……」