(早く診てもらった方が…)
おじちゃんの、言葉が頭を過った。
《この咳……》
「…ゴホッ…」
「……セラ…」
セラは、口元に手を押さえ玄関の前に座っていた。
「心」
私は、立ち上がった。
「どうしたんだ?……何かあったか?……」
「逢いたくて……心に……逢い……、ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「セラ!!」
セラは、その場に崩れるように座り込んだ。
「…ごめんね」
俺の腕の中で、セラは弱々しい声で言った。
「おい!大丈夫か!?セラ!!」
「……平気…」
俺は、セラの額に手をあてた。
セラの額は、温かかった。
「熱は無いようだな…」
俺は、セラを背負い新しいアパートに向かった。
「……心」
「何だ?!…」
「ごめんね……迷惑かけて……」
「バカだな……迷惑だなんて……」
《セラ……ありがとう…逢いに来てくれて……》
《心……温かいよ……心の背中……温かい……》
俺は、セラを背負って驚いた……軽い……俺の背中で力を抜いているのに、セラは軽かった。
「少し休め……」
俺は、セラをベッドに寝かせた。
「ありがとう……」
「あぁ…」
俺は、目を閉じたセラの頭を撫で、手を包み込むように握った。