「心」
私は、歩道に立っている心を見ていた。

――「セラ!」
車の助手席に居るのはセラだと分かり、俺は車道に出た。
「セラ!俺の話を聞いてくれ!セラ!セラ!」
俺は、助手席の窓に手を置きセラに向かって言った。

――「心…」
ガラス一枚の向こう側で、心は、大きな声で私の名前を呼んでいた。
「…直君、私…」
私は、運転席の直君を見た。
「下ろさない!」
「直君!お願い!心と話をさせて!」
「駄目だ!!」
直君は、大声を出して私に言った、後ろの車からクラクションを鳴らされ、直君はスピードを出し車を走らせた。
「心!!」


――「セラ!!」
俺は、セラが乗る車を追い掛け走りだした。


――私は、車の中から後ろを見た車のライトの間から心の姿が見えた。
「心!…、お願い!直君!少しでいいの!心と話をさせて!」
私は直君の腕を掴んだ。
「そんな事させる事は出来ない!」
「直君!!」


――「はぁー!はぁー!セラ!…待ってくれ!」
セラが乗る車との距離が、どんどん離れていく。
俺は、それでも脇腹を押さえながら走った。
「セラー!!」


――「心ー!!」
どんどん心の姿が小さくなっていく。