私は、左に見える海を眺め、返事をした。
「今日は、どうだった?忙しかった?」
「うん…」
「何か音楽でも聴く?」
「うん…」
「ドレスは決まった?」
「うん…」
「決まったか!どれにしたの?」
「うん…」
「………セラ」
「うん…」
「セラ!」
《はっ!》
「あっ!ごめんなさい!」
直君は、私の手を握った、にぎった手には、ドレスのパンフレットが握りしめていた。
「セラ…」
「ごめんなさい!海を見てたから……」
違った……、海を見てたからではなく、私の頭、心は、心の事でいっぱいだった。
車は、信号で止まった。
「上の空…」
「えっ!そんな事ないよ…」
「まだ忘れる事出来ないか?…」
「……忘れたよ」
「セラ、俺の事好きか?」
「……好きに決まってるじゃない……でなきゃ、結婚なんて…」
《!!》
「だよな!好きじゃなかったら結婚しないよな!、ごめん!俺変な事聞いて…」
《心!!》
横断歩道を歩く心の姿が、私の目に映っていた。


――信号が、点滅と同時に俺は、横断歩道を渡った。
俺は、何となく信号待ちしている白の車に目が向いた。
《!…、セラ?!》
俺は、立ち止まり車の助手席を見た。