「はぁー……ドレスかぁ…」
私は、パンフレットを手にとり、ため息がでた。
「本当に私は、このまま直君と……」
私は迷っていた…、心から愛していないのに直君と結婚なんかしていいのか…迷っていた。
直君に、愛していると言われて私も……、としか言えなかった私が、直君と結婚して直君を幸せにさせる事は出来るのか…、私の心に、心を想う気持ちが消えたなら、直君を愛せるのかもしれない…、でも私は、私の心には、心がまだ居る……。
あの夜、心に私の心を置いてきたつもりだった……でも、消せない……。
「心……!!」
私は、歩きだした………心の家に向かって、歩きだした。


――「おい」
「ん?」
「ん?じゃねぇーよ!お前、肉食わせてやるって言ってこれかよ!?」
「何言ってんだよ?肉だろ?これも!うめぇーぞ!心も早く食えよ!」
誠が言った肉は駅前の店の牛丼だった……。
「はぁー!旨かったな!」
「…あぁ」
「何だよ?飯喰わせてやったのに、まだ元気でねぇーのか?」
「俺が、思ってた肉とは違った」
「まっ!そんな時もあるさ!!これから海でも行くか?」
「海?!」
「あぁ!」
「…行かない」
無理だ…俺はまだ…。