玄関をノックする音がした。
俺は、ゴミ袋を退けて玄関に近づいた。
「…誰?」
返事がない。
ドアノブを握り、ゆっくりと玄関を開けた。
《!!》
扉の前には、びしょ濡れのセラが立っていた。
「セラ!!」
俺は、雨に濡れたセラを強く抱きしめた。
「心…」
「逢いたかった!ずっと!セラに逢いたかった!!」
「…私も逢いたかったよ」
私は、電話を切った後、やっぱり心に逢いたい気持ちが抑えきれない程強く、家を出てきた。
《心、嘘でも私に逢いたかったと言ってくれて、ありがとう…》

心は、私を部屋の中に入れ、バスタオルで私の濡れた髪を拭いてくれた。
「寒くないか?!」
「うん」
「洋服濡れてるな!着替えないと風邪引くぞ!」
「平気よ、すぐ乾くから」
「駄目だ!ちょっと待ってろ!」
俺は、洋服とズボンを探して、セラに渡した。
「乾くまで、これ着てろ!」
「あっ、ありがとう」
心は、そう言って私に背中を向けた。
「早く着替えろ」
「……」
《今日が、本当に心と逢うのが最後…無理して私に優しくしてくれて…付き合ってくれて…ありがとう》
私は、胸の中で心の背中に言った。
「着替えたか?」
「……」