「あのー…」
「あっ!俺冷し中華でいいや!」
「はい、冷し中華ですね」
私は、ちょっとだけ目線を黒髪の男の人に向けた黒髪の男の人は、お絞りを顔にのせたままだった。
私は茶髪の男の人を見た。
「あっ、ごめん」
「いいえ、じゃーメニュー決まったら呼んで下さい」
私は伝票をテーブルに置いた。
「…し中……」
「はい?」
私は振り返った。
振り向くと黒髪の男の人は、顔にお絞りをのせたまま何かを言った。
茶髪の男の人と目があう。
「あのー…」
「おい!心何だって?」
「…中華」
「心、冷し中華でいいのか?」
「あー…」
「冷し中華二つで」
茶髪の男の人は、愛想よく言った。
「冷し中華二つですね」
私は伝票を書きテーブルに置いた。
《なによ!あの客!暑いからってダラけるな!》
「おじちゃん!冷し中華二つね!」
「あいよ!」
キッチンから、私は黒髪の男の人を横目で見た。
顔にあてた、お絞りをとり水を一気に飲み干した。
私は、空になったコップを確認したが、水を注ぎに行かなかった。
私は椅子に座り黒髪の男の人に背を向けテーブルでお絞りを巻いた。
〈ゴン!〉
私が座っているテーブルに空のコップが置かれた。