耳鳴りがしている。
目の前で、女性が喋っているのに、遠くで話しているみたいに聞こえている。
(ドンッ!)
私は、肩を押され転んだ。
「人の男を取ろうなんて!嫌な女!帰ってよ!さっさと帰りなさいよ!!」
そう言って、女性は部屋に戻った。
《…》
「…心…夢だった」
私は階段を下りて、来た道に向かって歩いた。

――(ピンポーン…)
俺は、セラの玄関のベルを鳴らした。
(ガチャッ)
「今晩は!遅くにすみません!あの、セラさん居ますか!?」
玄関を開けて出てきたのは、おばさんだった。
「心君!セラなら!…」
「おい!!」
おばさんは、何かを言い掛けたが、おじさんの一声で、口を閉じた。
「今晩は!遅くにすみません!」
俺は頭を下げ、おじさんの顔を見た。
「帰りなさい!君にセラと会わすわけにはいかん!…帰りなさい!もう二度と私達の前に顔を出さんでくれ!!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!何で?!…どうゆう事ですか!? 」
俺は、おじさんにしがみ付いた。
「どうもこうもない!君は、セラ以外に女が居るそうじゃないか!!」
「えっ?女?…まさか!?」
頭の中に、沙羅の顔が浮かんだ。
「帰ってくれ!!」