「移動しようか?」

そう言った部長に、私はここが廊下だったことを思い出した。

そうか、もしかしたら誰かに話を聞かれる可能性がある。

年が明けたら知ることになるって言っているけれど、今すぐに知ってしまったら意味がないよね。

「はい」

私が返事をしたことを確認すると、部長は使用していない小会議室に案内した。

バタンと、ドアが閉まった。

ここにいるのは、私と部長の2人だけである。

「でも、その前に…」

部長の端正な顔が近づいてきたかと思ったら、
「――ッ…」

私と彼の唇が重なった。

最初は嫌悪すらも感じていたのに、今は受け入れることができるようになったのは、私が部長に恋をしたことに気づいたからだろうか?