「あっ、こんばんは…」

私はペコリと会釈をすると、自分のデスクへと歩み寄った。

「よかった、あった」

デスクのうえに置いてある手帳カバーがつけられたスマートフォンを手に取ると、私は息を吐いた。

困ると言う訳ではないけれど、手元にないとやっぱり寂しいものがある。

「それでは、これで失礼します」

部長に会釈をして立ち去ろうとしたところを、
「ああ、それと」

そう言って彼に視線を向けた。

「先ほどの告白の断り方ですが、あれは正直に言ってないなと思いました。

それと、社員の名前と顔はちゃんと覚えてください。

上司としての品格がどうだこうだと言う以前に、人間としてどうなのかと思いました。

では、失礼します」

私はペコリと頭を下げると、今度こそその場から立ち去ろうとした。