「私が、笑ってて欲しいと思うのは……傷つけたくないって思うのは、涼太なの」
「……うん」と、さっきと同じように返してくれる宮地に、顔をあげ、目を合わせる。
宮地は、微笑んだまま私を見ていた。
さっきまでのぎこちない笑みではなく、悲しみを瞳に浮かべながらの自然な笑みに、じわっと目の奥が熱を持ったのがわかった。
泣いちゃダメだ。
ここで、私が泣くのは違う。
涙をこらえて必死に宮地を見つめ続けた。
「宮地が好きなハズなのになんでって、たくさん考えた。自分でも、いつの間に気持ちが動いたのかわからなかったし、信じられなくて……。
でも、もしもひとりしか幸せにできないってなったら、私は涼太を幸せにしたいと思った」
松田さんに言われてからずっと考えていた。
涼太への気持ちは、ただの情なのか、恋心なのかって。
『幼なじみからの優しさに気付いて、どう思ってるのか。
ただ申し訳ないって気持ちだけなら、それは友情とかの類だけど、知らず知らずのうちに与えられてた優しさを知って、嬉しいって思ったなら、それはその幼なじみが好きだってことだと思うから』
……情じゃない。
『片想いしてきたヤツに告白されたときと、幼なじみの想いや優しさに気付いたとき。どっちが嬉しかったか。それが答えのような気がするけどなー』
私は、涼太のことが――。
「……ごめん、宮地。私が好きになったのに……勝手でごめん」
目を逸らさずに、絞り出したような声で謝る。
宮地はそんな私をじっと見つめたあと……ふっと笑みをこぼした。