だから『唐沢の隣だと気が楽』と笑いかけられたときは、胸の音が響いてしまうんじゃないかってくらい嬉しかった。

鶴野にからかわれた宮地が『唐沢はそういうんじゃないって。性別とかどうでもいい感じだし』と私の頭を撫でながら言ったときには、傷ついた。

宮地の言葉や笑顔に期待して、そして恋愛としては見られていないという事実を再確認する度に傷ついて……そんなのをずっと繰り返してきた。

何度繰り返しても諦められないくらいに、宮地が好きだったから。

だって……こんな人、好きにならないほうが無理だ。


「ごめんね。急に……。宮地、予定とかなかった?」

宮地を待ち伏せしたのは、金曜日の業務後。
支店の外に立ち、三十分ほどが経ったところで宮地が出てきて、裏道沿いの公園に移動することにした。

「話があるんだけど、時間もらえない?」と聞くなり、宮地はなにかに気付いたようにわずかに目を見開いたあと、微笑んでうなずいた。

勘のいい宮地は、私の〝話〟がなんなのかもう分かったんだろう。
告白の返事だってことが。

静かな夜の公園にはふたりだけで、丸い月が空で白く光っていた。

立ったまま向かい合うと、宮地はにこりと笑みを浮かべる。
珍しく緊張しているのがわかるような、ぎこちなさを感じる笑みだった。

「予定はなかったし、大丈夫。……まぁ、鶴野から誘いはきてたけど」
「鶴野……なら、まぁいいか」
「まぁ、いいな」

「鶴野ごめん……」と呟くように返しながら、宮地の顔をじーっと見てしまう。
だって、こんな宮地は初めてだから。