「私、そんなこと思ってません! 本当に向井さんのためにって、それだけを思って……」と食い下がる女の子に、涼太は嫌悪感のこもったため息を落とした。

涼太はもともと短気な部分があるからすぐイライラはするけれど、いつものそれとは違う、静かな苛立ちを感じた。

「本当に俺のためを考えてくれてるなら。もう俺の周りをうろつくのやめろ。いい加減迷惑だってわかんねーの?」

げんなりとした様子で、涼太が続ける。

「何度迷惑だって言ってもつきまとったり、俺の知らないとこでこいつのこと調べたり。挙句、俺とこいつの関係に口挟んでくるとか呆れる。
やめろって言ってんのに繰り返してそれのどこが俺のためなんだよ。ただやりたい放題やってるだけだろ」

ぎろっとした目で見られた女の子は、一瞬言葉を呑んでから慌てたように笑顔を浮かべる。

涼太にこれだけすごまれているっていうのに食らいつく様子を見て、結構タフな子だなぁと場違いにも感心してしまう。

「今はそうかもしれないけど、考えが変わるかもしれないし……。私、可愛いって周りからよく言われるんですよ。一目惚れされることだって多いし、今までの彼氏だって自慢の彼女って言ってくれてたし! それに、こう見えて家事とかも完璧だし! だからきっと、一緒にいたら向井さんだってそのうち私のこと……」

「悪いけど」

必死の笑顔で話す女の子を、涼太の冷たい声が止めた。
白い月灯りを受けている涼太が、女の子を見据え口を開く。