+++翼side+++
『ん!れん!!』
 あいつが戻って来ない
 そう思って、学校中を探し回った
 この時期、この寒さで屋上はありえないと思った
 けどありえないと思った場所に蓮はいた
「はぁはぁはぁ」
『蓮?』
 苦しそう、もしかして、熱?
 っつか、血が・・・
 血?
 まさか裏で
『やっぱり、裏に血がベットリ・・・』
「あったまいてぇ
 血ぃ出てんの忘れてた
 保健室行こ」
 バンッ
『蓮!』
「つば、さ?
 わりぃな、先戻ってて
 すぐ教室行くから」
『何言ってんだよお前!』
「何が?っつか頭いてぇんだから大声出すなよ
 よっこらしょ」
 こいつどこに
「あっぶねぇ」
『何考えてんの?』
「教室行ってとりあえず帰ろうかなって」
『お前が行くんだったら俺も行く』
「じゃぁ、いっsy」バタン
『おい、蓮!
 ---翼sideend---』
「すみません、俺が目を離してしまって」

「仕方ないよ
 蓮、一時期自傷行為してたしそのクセがまた出ちゃったってだけだと思うから」

 翼と父さんの声が聞こえる

 ここ・・・どこ?

「蓮起きたか」

『父さんごめんまた・・・』

「何があったかは聞かねぇし、どうして血が出るまでの強さで壁を殴ったのかは知らないけど、あんまり自分ばっか責めんな」

『うん・・・』

「それと俺じゃなくて翼に謝っとけ
 俺が、会議中で出られなかったのが悪いんだけど留守電になった瞬間切ってまた掛けてってのを30分以上ずっと続けてたからな
 翼はお前が大切なんだ
 お前が自分の事を責めるだけ周りを不安にさせてること忘れんなよ」

『うん・・・わかった』

「じゃぁ俺は仕事戻るな」

『ありがとう』

「おう」
「大丈夫か?」

『翼、また迷惑かけた
 本当にごめん』

「お前さ、自分の事をックあんまっ責めんなよ!!」

『つば』

「なんで俺を頼んねぇ!
 なんで俺達がいんのに俺達を必要としねぇ!
 俺はお前が感じてることを感じたい!
 お前が見てるものを見たい!
 俺をお前と同じ土俵に立たせてくれ!
 頼む・・・」

『翼、ごめん
 俺、勝手に一人だと思って突っ走ってた
 これからはひとりだけで突っ走ったりしないから、だからそんな顔しないで・・・翼』

「蓮」

『あのさ、明日も学校行きたいから俺のこれ包帯巻いてくんない?
 流石に利き手の包帯を巻くのはひとりじゃできねぇから』

「おう、いくらでも巻いてやる
 なんなら全身巻いてやろうか」

『ミイラにはなりたくないから遠慮しとく』

「あっそ
 んじゃ、蓮の家帰るか〜」

『ここどこだったの』

「病院」

『そんな大事だった?』

「お前、バカ?
 血ぃ出てるやつそのまま家に返せるかアホ」

『すんません・・・』

「雪也が迎えに来てるからさっさと行くぞ」

『はーい』
 +++遥海side+++

 放課後みんなが言ってた

 あのあと、蓮が倒れて早退したらしい

「久しぶり、元気にしてた?」

『誰?』

「あれ?覚えてな〜い?
 痛い思いしてせっかく産んでやったっていうのに」

『お・・・かあ』

「ピンポーン、正解ー!」

『どうして・・・

「ねぇあんた、今KIRIYAのガキとつきあってるらしいじゃん
 しかもかなり溺愛されて育ったって聞いたよ
 親は元不良、しかも伝説の帝王12代目総長って噂
 今でもかなり裏の世界仕切ってるらしいじゃん
 その仲間紹介してよ」ボソッ

『私れn、今付き合ってる人の仲間とあんまり喋らないから無理です』

「へぇ~、れんって言うんだ
 いい事聞いた
 それじゃぁね」

『蓮に何する気!』

「そんなの決まってんじゃん
 あんたからそのれんって奴を奪ってれんからその家族に漬け込むんだよ
 そうすれば、金も権力も手に入る!
 夢のような人生じゃないか!
 それに、あんたからすべてを奪い取ることもできるしね
 そういう訳だから、覚悟しておきなよ」

 絶望と自分でも嫌になるようなドス黒い感情が私の心を蝕んでいく

 苦しい、辛い、憎い、様々な感情が体を支配していく
 また、あの時みたいに・・・

「あんたなんか生まれなきゃよかったのに!」
「死ね・・・死ね死ね死ね死ね死ね!お前なんか死ね!アハハハハハハ!」

 やめて

 やめて

「お前なんかに生きる価値も存在する意味もこれっぽっちも無いんだよ!」

 やめろ!

 ---遥海sideend---
 +++千夜side+++

『おい、お前ら
 光翔さんと玲音さん、蓮に手分けして連絡しろ』

「分かった」

「千夜は、どうするんだよ」

『俺は、夏梅と行動する
 夏梅、良いな?』

「あぁ」

『涼浪は終わったらあの母親の身元特定をしろ
 俺から城島に連絡しておく』

「分かった
 蓮はどうするの?」

『蓮も後で合流すると思う
 どうなるかは秀人に伝えるから』

「大貴は?」

『大貴はあの女の尾行を頼む
 場所はわかり次第伝えるからそれまで待機してくれ』

「分かった
 下も数人出すか?」

『そうだな、4班から2,3人出してくれ』

「手配しておく」

『各自臨機応変に対応しろ
 行け』

「「おう」」

 俺の指示によって動くあいつらの姿は総長の俺をも超えるたくましさがある

『俺たちも行くぞ』

「どこに行くんだよ」

『遥海の所だ
 あいつが狙われてる』

「でも俺」

『そうだな、けど今はお前の感情より遥海の事を守るのが優先だ
 もしお前がこの間行ったことを後悔すんなら謝れ』

「そうだな」

『遥海の家まであと少しだ
 それまでに自分がどうしたいのか考えとけ』

「おう」

 ---千夜sideend---
 〜〜〜♪

『はい神谷です』

「蓮、遥海が狙われてる」

 やっぱりか

『分かった、そっちは千夜の指示に従って
 俺は城島に行く』

「分かった、涼浪が後から城島に行くと思うからそのときに詳しく聞いて」

『分かった、さんきゅ秀人』

「おう」


 プツッ


『翼、出るぞ』

「どこ行くの?」

『城島に行く』

「分かった、蓮手出して」

『んあ?』

「包帯」

『今はそんなの』

「いいから出す!出さなきゃ縛ってでもこの部屋から出さないからな」

『分かった分かった
 ほら』

「何があったか知らないけど今は脳に酸素送って落ち着け」

『うん・・・』

 聞きたくないけど今回は聞かずにはいられないか・・・

「終った」

『さんきゅ、んじゃ行くぞ』

「おう
 今日は特別に俺が、運転してやる」

『えっ、翼運転できたの・・・』

「これでも一応は20歳だからな」

『そうだった・・・
 俺、翼より4歳年下なの忘れてた』

「お前なぁ
 まぁとりあえず乗れ」

『うん
 翼の車って自分で買ったの?』

「おう、それなりの給料は貰ってるからな
 金貯まってたからキャッシュで買った」

『新車?』

「おう」

『すご』

「そろそろ着くぞ」
「蓮!」

『涼浪、どうだ、情報は集まったか?』

「今、冬弥さんが調べてくれてる
 ごめん、やっぱ俺なんの役にも」

『今はそんな事言ってる場合じゃねぇ、お前のいる場所、お前の信用してるやつが命張って守ってる場所を無くしたくねぇだろ?』

「あぁ、すまない」

『霧!』

「ほいほい」

『この間頼んでおいた資料はできたか』

「おう、ここにあるよ」

「これ何?」

『冬弥、なんか見つかったのか?』

「うん、見つかったよ
 でもその前に蓮のやつ教えて」

『おう、これはこの前の風宮の資料だ
 俺があいつの息子と殺りあった時俺は名乗らなかった。だから、風宮のやつらは俺が城島に関係してるなんてわかる訳がない。風宮の上に何かあると思って霧に頼んでおいた』

「あのぉ~、蓮さん?
 僕ちんが一生懸命調べたこと全部先に調べないでくれるかなぁ・・・」

「どういう意味ですか、冬弥さん」

「俺が調べたこと全部、霧が調べたってこと
 それを指示したのは紛れもなく神谷蓮っていう一人の男なんだよな・・・」

「ほんと、蓮ってすげーよな」

「霧さんと冬弥さんって蓮の事、何時もどんなふうに見てるんですか?」

「あ~、霧はどう見てる?」

「できの良い弟とか、できの良い親戚の子って感じかな
 バスケとか誰かと喋ってたりするときは屈託のないただただ純粋な笑顔振り撒くくせに、自分が大切だと思ってる奴らに何かあると、俺達城島の人間でさえも怖くなるくらい蓮の感情が分からなくなる」

「確かに!それわかる!
 俺は、そうだなー
 なんかよく分かんねぇ奴!」

「はぁ?冬弥変なこと言うなよ」

「変かなぁ・・・
 だって蓮ってすっげー頭良くて時々俺達が考えた事が失敗するって目に見えてるように、全く別の真逆の作戦出してくるし、人を動かすための状況判断力もすごいじゃん。
 それなのに、ごく普通の高校男児だよ!
 よく分かんなくね?」

「まぁ確かに、言われてみれば・・・」

「霧もそう思うだろ?
 って言うか涼浪はどう思ってんだよ
 さっきから難しい顔しやがって」
「俺は・・・」

「おっじゃまっしまーす」

「離してよ!」

「分かったから、落ち着いて
 千夜の事あんま怒らせんな」

「やだ!離して!」

『千夜、夏梅お帰り。
 ご苦労様』

「ほんとだよ〜
 この子なかなか落ち着いてくれないからもうそろそろでキレそうだった
 だ〜か〜らぁ〜っ!蓮ぎゅー!」

「おい千夜・・・」

「なぁに〜?
 もしかして涼浪と夏梅嫉妬してるの?」

「ちげーよ」

「千夜もいい加減蓮離れしなね」

「えぇ〜、涼浪と夏梅のイジワル」

『千夜、ちょっと離れて
 これから会議だから俺行かないと』

「それなら、しょうがないけど・・・
 ねぇ蓮・・・腕、僕のせい?
 僕達が蓮のこと怒らせたから腕怪我したの・・・?」

『大丈夫だよ、千夜。
 昔の癖が出ちゃっただけだから、千夜は気にしないで?千夜はもう千夜だけの千夜じゃないんだから。
 千夜を慕って千夜を尊敬してる人達がいる。だから、千夜はそんな顔しちゃだめだよ。』

「うん・・・分かった!」

『遥海、手荒な真似してごめんね。
 緊急事態だからしばらくここで組員と話すなり何なりしてて
 その内、敦桐(あつぎり)が呼びに来ると思うから。
 これから緊急時対策会議を始めます。各役職のトップは天竺牡丹(ダリア)に来てください
 それから、個人名を呼びます。その方々も移動願います。
 千夜、夏梅、霧、冬弥
 ・・・
 以上です。宜しくお願いします』

「あの、蓮」

『なに?』

「ううん、やっぱりなんでもない
 引き止めてごめん」

『そう?
 なんかあったら遠慮なく言ってね
 あそこにいる組員にはお菓子食べたいって言ったら部屋から大量に持ってくる奴とか、つまんなければTVゲーム持ってくるやつも居るから、喋ってみると結構面白いよ。
 それと』

「何?」

『最初はツンデレだけど、喋り始めると卑猥な事しか言わないやつもいるから気をつけてね』コソッ

「うっ」

『じゃあ行ってくる
 いい子にしててね』ちゅ

「あ~、ずるい〜!
 千夜も〜!」

 ゴン

「千夜、いい加減にしろ」

「はーい」
 +++遥海side+++

 母親と会って家について荷物を置いたとき、呼び鈴がなった

『どちら様でしょうか。』

「千夜と夏梅で~す」

 今度はあの煩いのが来た

 ガチャッ

『何?』

「今すぐ荷物まとめろ
 5分後に出るぞ」

 千夜の顔が声が学校で見たときとは違った

 下に人が居るって人はこんなに真剣になれるのかな

『理由は?』

「そんな時間ない
 早くして」

『理由分かんないからやだ』

「あっそ
 夏梅、もう連絡してあるよな」

「してある、多分4,5分でつくと思う」

 なんの話してるんだろう

「じゃあ決まり
 行くよ」

「暴れないで、大人しくしててね」

『何?触らないで!
 やめてってば!』

「君煩い
 だから女って嫌い
 いちいちギャーギャー騒ぎやがって
 可愛いと思ってやってんのかしらんけど、ちょっとは黙れよ」

「夏梅、急ぐよ
 遥海もほんと黙ってね」

「走るぞ」

 そう言って千夜にあたしを渡す夏梅

『何すんのよ』

「煩いなぁ、僕の事殴ったりしないでよね」

『なにを!
 きゃぁ』

「ほんと煩い
 落とされたくないなら大人しくね
 夏梅行こ」

「おう」

 そう言って走る2人
 なんでこいつあたし抱えながら普通に走ってんの・・・

 ***

「はいとーちゃーく」

『城島・・・組』

「ピンポーン、今からこの中に入ってもらいまーす!」

『やだ!』

「おっじゃまっしまーす」

『離してよ!』

「分かったから、落ち着いて
 千夜の事あんま怒らせんな」

『やだ!離して!』

「千夜、夏梅お帰り。
 ご苦労様」

 蓮だ・・・

 今日は早退したのにこっちには居るんだ・・・

「ほんとだよ〜
 この子なかなか落ち着いてくれないからもうそろそろでキレそうだった
 だ〜か〜らぁ〜っ!蓮ぎゅー!」

 私には、何も言ってくれなかった

 千夜とか夏梅とかの事のほうが大事なのかな・・・

 それに、目、合わない・・・

「遥海、手荒な真似してごめんね
 緊急事態だからしばらくここで組員と話すなり何なりしてて
 その内、敦桐(あつぎり)が呼びに来ると思うから。
 これから緊急対策会議を始めます。各役職のトップは天竺牡丹(ダリア)に来てください
 それから、個人名を呼びます。その方々も移動願います。
 千夜、夏梅、霧、冬弥
 ・・・
 以上です。宜しくお願いします」

 蓮が違う人みたい

 表情も、雰囲気も、わかるとこ全部違う

 千夜達が、蓮を慕うのはこういう事なのかな・・・

 ---遥海sideend---

お散歩

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