琴音が狙われた。しかも、恐らくプロの殺し屋まで差し向けられている。

そこで考えられることは1つ。奴らが、琴音を人身売買にかけた奴の存在がいよいよ迫って来たということ。

「後少し遅かったら鉢合わせていたところだった。幸い、咄嗟に隠れてやり過ごしたけどな」

「逃がしたのか」

「琴音を抱えて5人相手じゃ無理だ。それに、琴音の息もギリギリだったからな」

平沢の判断は正しい。下手に戦えば危険は何十倍にも増す。

それも、その時平沢は1人だったはずだ。意識のない琴音を守りながら戦うのはあまりにも無謀だ。

親父も分かっていてそう聞いたのは、平沢が判断した奴らの技量を計るため。

「すみません、頭。俺の落ち度です」

謝罪を入れたのは信洋だ。確かにこの類は信洋の案件であり、事前に調べがついていないのは落ち度と言える。

だが、それが出来ないほど仕事を押し付けたのは俺だ。この失態は俺の怠惰のせいでもある。

「信洋にあれもこれもやらせた俺のせいだ。平沢、危険な目に合わせてすまなかった」

「俺に謝ることじゃない。それに、お前らまた琴音を危険にさらしたんだぞ。これで何度目だ?守れねぇなら、下手に約束なんかするな」

平沢の言葉は重い。

確かに俺は琴音に対して安易に守ると言う言葉を使いすぎている気がする。

次は必ず…そう何度口にしただろう。大して欠点を見直そうともせず、ただ悪戯に言葉を吐いていた。