いつもは寝ているであろう時間だったが、親父は穏やかな顔で迎えてくれた。

そこへ信洋と森末も顔を出す。円を作るように座り、顔を見合わせた。

「結論から言えば、琴音は無事に連れて来た。今医者に診せてるが、恐らく軽い酸欠くらいで済んでるだろう」

「そうか。…それで、何があった」

聞く前から確信を持ってそう言葉を吐いた親父。何もかも見通しているようなその目は衰えなど感じさせない。

平沢は頷くと、片膝を立てる。見せた表情はまるで目の前に敵がいるかのような鋭い物だった。

「5人組の男が銃を持って琴音を攫いに…あるいは殺しに来た。あいつら、本職だぞ」

平沢の言葉に耳を疑う。まさか、琴音を狙った暗殺者?

琴音をここに連れてくると決めたのは、名蔵が宮内琴葉の名を出したからであって、そんな存在がいると想像すらしていなかった。

…いや、待てよ。そう言えばここ数日、琴音の部屋のネームプレートが外されたり、そのフロアの名前が出鱈目にすり替えられていた。単なる子どもの悪戯かと思っていたが…。

名蔵は気づいていたのか?俺たちにわざと琴音を連れ出すように仕組んだのか?

確かめる術もない考えに頭を振るう。考えるべきところはそこではない。