季龍side

屋敷の中の空気は張りつめていた。

平沢、信洋、森末という必要最低限の人数で琴音を病院から連れ出すと決めたのは親父だった。それも、平沢のみが潜入し、連れて戻ると言う無謀とも思える作戦。

今か今かと連絡が入るのを待っている俺たちの元にはなんの連絡も入らず、いたずらに時間だけが過ぎる状況に焦りと不安が募っていく。

やはりもっと人数を増やすべきだったんじゃないか。…それとも、琴音の容体が急変してとても連れ戻すことも叶わない状況なのか。

情報がない中で浮かぶのはそんなろくでもないことだけで…。

嫌な考えを振り払うように頭を振るう。

信じろ。平沢は永塚の中でも最前線を生き抜いてきた男だ。そんな平沢だからこそ、単独行動を任せられたんだろ。俺が行くよりもずっと成功率は高い。

押し寄せてい来る不安という不安を振り払い続ける。

それでも、時間が経てばたつほど嫌な考えは膨らむばかりだった。

大きく息を吐き出す。少しだけ気分が軽くなった気はしたが、それもすぐに戻ってしまう。

ただただ待つことしかできない自分のふがいなさを呪った。