にわかには信じがたい。でも、心のどこかでここちゃんなら、やってしまうのではないかと思う自分もいる。

自らを律するここちゃんは、使用人として動こうとするここちゃんは、自分を意図も簡単に見捨ててしまう。そんな子だから。

多分、平沢さんの仮説は正しい。

それに納得した自分がいるのは事実。そして、ここに来るまであった違和感が跡形もなく消え去ってしまっている。

恐らく間違いないんだ。

ここちゃんは、自分が狙われていることを知っていて、若を巻き込まない為に自らを敵のもとに晒した。

それ以上に今あるこの状況を説明する新たな“事実”は浮かび上がってこなかった。

でも、また疑問が生まれる。

どうしてここちゃんは“自分が狙われていること”を知っていた?

俺たちは一言も、ここちゃんが狙われていることを伝えていない。それなのになぜここちゃんは自分が狙われていると判断できた?

…待てよ。どうして俺は今、ここちゃんが“永塚組に来た時点”から考えた?

ここちゃんが狙われた理由は、“拐われた時点”からの理由かもしれないのに。

でも、どうしてだ。どうして俺は“永塚組に来た時点”からが正しいなんて思ってるんだ?

いや、それでは遅い気がする。もっと前。“永塚組に来た時点”より、ずっと前からここちゃんは自分が狙われていることを知っていたんじゃ…。